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機動戦士Zガンダム
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===TV版から劇場版へ=== ファーストガンダムの時から順風満帆な状況ではない中で作品を立ち上げ、再放送で爆発的人気を得た後も富野監督にとっては悩みの尽きない創作環境だった。<br /> 二元的対立だったファーストガンダムから三つ巴の対立構図となった『Z』の中でもエゴや大義に溺れて極端な方策に走り、人道を踏み外す「やりすぎな人たち」に対する怒りや嫌悪はブレることなく保たれているが、それを主人公であるカミーユが強く背負い過ぎているゆえに、良くも悪くも情動の激しいキャラクターは前作の主人公・アムロに比べ視聴者との距離を感じさせる印象になった。<br /> 傲慢と非情で自我を肥大させる者、鬱屈と怒りで自我を尖らせる者、双方共に自己中心的に、刹那的になっていき、人間性の希薄さと純粋さがより強烈に、深刻に混在する作品世界はニュータイプとしての可能性をも行き詰らせ、富野監督の悩みをより深める方向へ進んでいった。 僕はむしろ、大人たちの願望が強ければ強いほど、(Zガンダムの)打ち切りは早いと思う。 「重力に魂を引かれた人々」というのは作品の渦中の人たちに対しての言葉だけではない。・・というのが、ここにもある。 こういう現実が、イコール『Z』の世界じゃないのかな。(TV版放映開始時のインタビューより) Zガンダムは僕にとっての現実認識のストーリーであったんです。それから考えていったら、彼(主人公・カミーユ)はあの様になるしかなかった。 自分の限界を超えて、無理に力を得ようとカミーユがやっているわけで、限界を超えてしまっている彼に何も起こらないで済ませるわけにはいかなかった。 (TV版終了時のインタビューより) 執着と否定と殺し合いの袋小路に辟易し続け、精神疲弊をこじらせた果てに現実と自我の隔絶に陥ったTV版カミーユと同じく、富野監督も後番組『機動戦士ガンダムZZ』では明るい作風を目指すも詰めきれず、後続作『Vガンダム』の失敗で絶望の深潭に沈んだ。『Vガンダム』の後番組である『Gガンダム』を「格闘技大会」として企画するよう提言したのもただの諧謔ではない心境が窺える。<br /> のちに富野監督は新たな方向性を見出し、復帰作『ブレンパワード』『[[∀ガンダム]]』『OVERMAN キングゲイナー』でより包括的かつ統合的な世界観の構築に成功する。こうした経緯を経た新訳としてリメイクされた劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation』にもその影響は顕著に現れており、カミーユのキャラクターと顛末はTV版から大きく変わっている。 全部目の前に現われてくる事象を、テレビ版のカミーユみたいにプレッシャーとして、フラストレーションが高まるというふうに感じるんじゃなくて、 全部それが外界を学習するための人々、そのための事件だと受けとめるようにしました。カミーユの受けとめる目線だけを変えたんです。 (Zガンダム・ヒストリカ1より) すなわち、戦いに疲れ、ニュータイプになりそこなたカミーユが自己閉塞するというようなテーマでは、現実の暮らしのなかでおなじような体感をして、 それぞれの人生を送っている青年たちには、自閉させるツールとして消費させられるだけと感じたのだ。(中略) 作業は、カミーユという主人公が出会う事件、出会う人、体験する戦闘経験をとおして、心になんらかの糧になるものを感じられる少年と考えて、 彼の人生を追いかけてやるだけのものにした。そのために、大団円がどうなるか分からないまま全体構成をやり直していったのだが、 そこで得られた結果は、かるい病気など吹き飛ぶような当たり前のものになって、自分ながら舌を巻いたものだ。(中略) この仕事によって、ぼく自身、少しだけ足場をずらすことによって、もう妄想は抱かないですむだろうと 想像できるようになって、ありがたいと感じるようになった。 (Zガンダム 創作の秘密より) 一方で、カミーユに戦いの道を歩ませるきっかけを作りつつも、TV版カミーユのように怒りを戦いの動機にできず、エマのような強い人格を持てず、根が実直なゆえにバスクやシロッコのような冷酷さを、ヤザンのような豪快さを持てず、組織に翻弄されて存在感が薄れる損な役回りのライバルキャラだったジェリド・メサの救済は殆ど無かった<ref>富野監督も作品中盤以降のジェリドの変化について生真面目な性格ゆえのものであることを認めている。</ref>。<br /> 本来のバックボーンの薄さと、組織人としての思考に完結した主体性の弱さ、粗野な感情と未熟さを払拭しきれなかったゆえの人間的な深みの不足が、物事の運び次第では得られたであろう成長や突出を他のキャラ(特に劇場版カミーユ)に持っていかれてしまった感がある。
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